ベルドラ共和国首都ハインスブルグ、ロッドバイル王立美術館まであと数キロ。
整った街並みと、なんだかよく分からない大げさな装飾の建物どもは、さすが芸術が栄えていると言われるだけある。
まあその辺り詳しくない俺にとっちゃ、単車で走りやすいことだけがありがたいわけだが。
閉め切られたアトリエから姉貴を連れだした。
姉貴が生み出した作品の一つを抱えて、半ば無理矢理に姉貴を後ろに乗せ、逃げるように飛ばした。
きっとこの後、親父に殴られるんだろうが、知ったこっちゃねえ。
アトリエとの距離が離れると徐々に速度を緩めていく。
作品を守るように、姉貴に負担がかからないように。
そしてアトリエの外での時間が少しでも長ければと。
姉貴曰く、ロッドバイルの館長に見せたい作品があるんだとか。それが今傍らにあるヤツだ。
自分の全てぶつけて生み出したとかの大事な作品らしい。
芸術どうのこうのは俺にはわからない。綺麗な絵だと思うが専門的なことはさっぱりだ。
ただ、これを作り上げるのに姉貴が相当努力をしてきたのを俺は見てきた。
確か一度は突っぱねられたとか、そんなことを言っていた気がする。
これにはいろんな思いを乗り越えて作り上げた、姉貴のいろんなもんが詰まってる作品だってことは分かる。
つまり俺がどうなろうが、これと姉貴は死守しなければならない。
何が何でも、ロッドバイルまで無事に届けなくてはいけない。
そんなことを言うと怒られそうだが、そうさせたのは姉貴なんだから文句は受け付けない。
普段全然主張などしない姉貴が、ロッドバイルに作品を飾るのが夢だと語った時に見せた笑顔。
あんなもん見せられたらそう思うのも仕方がないだろ。
そしてそんな顔知ってるのは多分今のところは弟である俺だけ……多分。
見上げると折り重なる建物どもの向こうから、徐々に覗くように、目的地が見えてきた。
もうすぐだと声をかけると小さな返事が返ってきた。まわされた腕に少し力がこもる。
緊張してるんだろうな。
最後の休憩を終えてから暫く、姉貴の顔は見ていない。今どんな表情しているんだろう。
それはわからないが、今の姉貴の中には夢だか希望だか、そういうもんで溢れかえっていればいい。そうであればいい。
ロッドバイルまであとほんの少し、風を切りながらそんなことばかり考えていた。
